
写真集『建築のことばを探す 多木浩二の建築写真』第二刷予約受付開始
本書は、故・多木浩二(1928-2011)が1968年から1979年に撮影した個人住宅17軒、125点の写真を収録します。被写体の建築家は、篠原一男(1925-2006)、坂本一成(1943-)、伊東豊雄(1941-)、白澤宏規(1943-)で、それぞれの建築家が生前の多木から預かったというフィルムおよびプリントを複写しました。本書編者のアーティスト・飯沼珠実が、本書刊行までにみつけた多木の建築写真は12,000コマを数え、収録写真の半数以上が、撮影から50年前後のときを経て、本書において初めて発表されます。
写真は被写体の竣工年順に並べられ、建築作品の基本情報に加え、本書デザイナー・高室湧人が描きおこした図面に、多木の撮影地点をプロットした資料が添えられます。さらに2本のテキスト、多木が篠山紀信写真集『家 meaning of the house』(潮出版, 1975)に寄せた28編のエッセイのひとつ「家のことば」と、文化人類学者・今福龍太の書き下ろし「家々は海深く消え去りぬ 多木浩二の『反-建築写真』」を収録します。
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被写体:花山南の家 1968, 鈴庄さんの家 1968, 未完の家 1970, 篠さんの家 1970, 直方体の森 1971, 同相の谷 1971, 海の階段 1971, 久ヶ原の住宅 1972, 成城の住宅 1973, 谷川さんの住宅 1974, 上原通りの住宅 1976, 代田の町家 1976, 中野本町の家 1976, 花山第3の住宅 1977, 愛鷹裾野の住宅 1977, 上原曲がり道の住宅 1978, 銀舎(多木自邸)1979.

みなさまから頂戴したコメント
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今福龍太さん / 文化人類学者、本書寄稿者
思ったよりずっしりと重く、この重みは編者の情熱の大きさによるものにちがいありません。けれどどこか風が吹き渡る爽快さも感じ、多木さんも喜ばれている気がしました。著者や遺族の意思にも配慮し、その上で歴史的な意義と未来的な展望とをとりこんだ、周到な作りの労作だと思います。本書の写真と解説を受けての多木陽介さんによるテクストの小冊子の存在感も魅力的でした。構想からわずか2年ほどでのこの素晴らしい本の完成に、心からの労いと感嘆の気持ちをお伝えしたく思います。
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藤原徹平さん / 建築家 フジワラテッペイアーキテクツラボ主宰 ドリフターズインターナショナル理事
本というよりも、建築を経験する人間のバイブスが直に伝わる物体というべきものです。学生には少し高くて手が出ないかもしれませんが、バイトを1日増やしてでも手に入れて欲しい。 シルバーのインクで物質感が際立ち、また境界が揺らいでいるようで、見るたびに違う印象をもちます。多木浩二の写真が新たな文脈の中に立ち上がっていて、本当に素晴らしいプロジェクトだと思いました。
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山下正太郎さん / コクヨ ワークスタイル研究所所長 京都工芸繊維大学 特任准教授
構造としての建築を撮っているわけでもないし、人の営みに注目しているのでもない、いい意味で見たことのない写真集。写真は文字で語りえないものを伝える手段といえますが、それでもなおそこに確かな概念を読み取ろうという批評家の執念を感じました。こういう抽象度の高い純文学的な建築はこれからあまり出てこないでしょうから、本書の歴史的な価値は増すのではないかと。
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元木大輔さん / 建築家 DDAA/DDAA LAB代表
多木浩二写真集「建築のことばを探す 多木浩二の建築写真」が良すぎて悶絶してる。
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本間智希さん / 建築史家 RAD 一般社団法人北山舎代表理事
多木浩二さんの未発表写真はもとより、やはり今福龍太さんの文章、そしてご子息の多木陽介さんが寄せた文章のおかげで、現在的な意味が付与された印象。一人の情熱が、沈殿しつつあった歴史を現在にまで浮上させた仕事と言える。